読んでみたい本
人は何のために生きるのか?」(マルティン・ハンガー) 20世紀最大の哲学者の答えとは?
世界的名著『存在と時間』を著したマルティン・ハイデガーの哲学をストーリー仕立てで解説した『あした死ぬ幸福の王子』が発売されます。ハイデガーが唱える「死の先駆的覚悟(死を自覚したとき、はじめて人は自分の人生を生きることができる)」に焦点をあて、私たちに「人生とは何か?」を問いかけます。なぜ幸せを実感できないのか、なぜ不安に襲われるのか、なぜ生きる意味を見いだせないのか。本連載は、同書から抜粋する形で、ハイデガー哲学のエッセンスを紹介するものです。
すべては「自分のため」という目的に行き着く
「いいか、よく聞け若者よ。道具が道具として存在できるのは、そこに目的があるからだ。目的のない道具なんて想像もつかないだろう? では、その目的の根源はいったいなんだろうか。たとえば、ハンマーは、クギを打つ目的のためにある。クギを打つのは、家を作る目的のためにある。そして家を作るのは、そこに住むという目的のためにある。このように目的は連鎖しており、『何のためか』を問いかけることでその目的の根源へとさかのぼることができる。
ならば、無限に目的を遡った先には何があるか。それは『自分自身』だ。どんな道具体系だろうと目的をさかのぼれば必ず『自分のため』という究極の目的にたどり着く。つまり、世界のあらゆるモノは、『自分』という究極の目的のために道具として現れているのだ。だから本来、おまえは道具体系すなわち世界において、もっとも重要で特別な存在であり、かけがえのない存在なのだ」
これを読んで、目先のことに惑わされず、前を向いて、おじさんも正にそう思いますよね。